浄水場、下水処理場、ゴミ焼却場など大型案件の設計施工をしていると、時折「談合疑惑」で逮捕者が出た・・という残念な事件が起きる。外から見ていたときには「なんとまあひどい事をするのだろう」と思っていたけれど、いざ自分がその大型案件を設計施工する側に立ってみて、それまでには見えなかった物が沢山見えてきました。例えばある町の雨水処理場を設計したときのこと、予定価格は5億だったのですが、あれこれ考えてみて「これは3.5億で造れるぞ!」となりました。意気揚々と町の担当者に話したところ、喜ぶと思いきや、なんと「困ります。5億で造って下さい!」と頼まれてしまったのです。
これには驚きました。一体町の経費が少なくて済む事の何がいけないのか?全くわかりませんでした。しかし、次第に事の複雑さが見えて来ました。例えば「5億円と結論したのは誰が?」もし、役所の管理職だったら、今の肩書きは何? その人やグループにとって、「3.5億で造れます」というニュースはどのような意味を持つのか?このような忖度を重ねて行くと、何人かの面目が潰れる構図が見えて来ました。
談合の裏には、「お金がかかるものはかかる!」と認められない人々の弱さがある。勇気の無さがが大きな原因

実は大型工事の談合にも、これと似た構造があるのです。当時、地方自治体から浄水場注文を受ける事ができたのは(入札資格があったのは)B造船 C重工 D鐵工 などの合計6社でした。 例えばA市で浄水場を作ろうとすると、入札にかけるためには先ず発注元であるA市が「浄水場設計図面」作成と「必要な材料、資材のリストアップ」を先ずはそろえてから入札になります。この作業がとても大変なのです。図面はA1で100枚とかは普通で鉄筋の本数まで拾うのには膨大な時間を要します。この作業を誰がやるのか?と言えば、建前上はA市水道局、水道課ですが、そこにこんな大仕事を出来る人材は普通は居ませんので、外部のコンサルタントに依頼することになります。この際の依頼費用が、当時は「聞くのはタダ。情報の値段は安いもの」という風潮があったため、お役所からの発注額は「あり得ないほどの安値」例えば実際は2千万円かかるものを、あろうことか500万円として発注されます。そしてその「格安発注」がA市の発注実績として記録されます。
500万円で値切られたコンサルタントは、そのまま自分たちでこの仕事を行なうと真っ赤な赤字の為、とても出来ません。それでこの大仕事をしてもらう業者を探します。すると最適な業者は・・入札に参加する予定の6社の中から選ばれて、選ばれた業者は一時無給で見積もり作業を行なうのです。そしていざ入札となると、「すでに根回し、調整された受注業者に仕事が回る」という運びになってしまいました。元はと言えば「コンサルタントに安請け合いをさせた」ところが、最初の原因で、ここに相応のお金を払っていれば、健全な入札が可能となっていたでしょう。こんな無理な安請け合いが、お役所の成果としていつまでも残り、後輩達が腫れ物に触るように、そこには触れないで、又次の下水処理場建設に古い発注実績を見て、安くコンサルタントを使うような事がくり返されてきた歴史がありました。勇気を持って「とても500万円では出来ません。2000万円でコンサルタントに発注しましょう!」という職員が出た場合は、この悪習は絶ちきる事が出来ます。多くの談合にはこのようなしがらみが今も残っていると考えています。

コメント